☆エリスの備忘録

個人的に読み返すための備忘録。一応公開用。

🔷辞書 名作

🔷「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ」

「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」
フリードリヒ・ニーチェ善悪の彼岸』146節より


🔷「うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと」
江戸川乱歩


🔷悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、
五尺の小躯を以て此大をはからむとす。
ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ。
萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、
曰く、「不可解」。
我この恨を懐いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。
藤村操 辞世の句「巌頭之感」


🔷「何人か鏡を把りて魔ならざる者ある。
魔を照すにあらず造る也。
即ち鏡は瞥見す可きものなり
熟視す可きものにあらず。 」
斎藤緑雨


🔷苦しいの日月を切り落し、天地を粉韲して不可思議の太平に入る。
吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。
太平は死ななければ得られぬ。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。
我輩は猫である夏目漱石


🔷「ある時代が混乱して見えるのは、見る方の精神が混乱しているからにすぎない」
ジャン・コクトー


🔷「されど夜明けまでぼくの腕に
この生きる体 横たえておこう:
死にゆく罪ある命だが
すべてがぼくの美しい人だから」
オーディン「ララバイ」


🔷Vanitas vanitatum omnia vanitas.
コヘレトは言う。なんという空しさ、なんという空しさ、すべては空しい。
旧約聖書「コヘレトの言葉」


🔷時は春、
日は朝、
朝は七時、
片岡に露みちて、
揚雲雀なのりいで、
蝸牛枝に這ひ、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。

ロバート・ブラウニング「春の朝」
長編詩「ピッパが通る」の中の一節。


🔷私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ

Mon oreille est un coquillage
Qui aime le bruit de la mer.

ジャン・コクトー
(20世紀フランスの作家・詩人・映画監督)
原詩はフランス語。堀口大学訳。


🔷さくら さくら
やよいのそらは みわたすかぎり
かすみかくもか においぞいずる
いざや いざや みにゆかん
「さくら」日本古謡(作者不詳)


🔷「父上様、母上様、三日とろろ美味しうございました」
円谷幸吉

川端康成はこの遺書について
「相手ごと食べものごとに繰りかへされる〈美味しゆうございました〉といふ、ありきたりの言葉が、じつに純ないのちを生きてゐる。そして遺書全文の韻律をなしてゐる。美しくて、まことで、かなしいひびきだ。千万言も尽くせぬ哀切である。」


🔷「てふてふ(蝶々)が一匹 韃靼海峡を渡つて行つた」
安西冬衛

詩集『軍艦茉莉』の「春」と題する有名な一行詩。作者は現代史のすぐれた先駆者で、大正末期の新散文詩運動により、現代詩に大きな影響を与えた。
韃靼海峡は間宮海峡タタール海峡)の古称。

「てふてふ」は長調の古いかなづかいで、萩原朔太郎も好んで用いた。蝶の飛びかたが目に見えるようだからである。生まれてまもない蝶がただ一匹で海峡を大陸目指して渡って行った。